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テレビ放送講座 平成8年度テキスト「第4回 山なみ紅く鮭漁」


 富山県民生涯学習カレッジ本部

TOP 第4回 山なみ紅く鮭漁 角 祐二

川と生きる 〜富山の川魚漁〜サケの種類
 サケ科サケ属の仲間には、サケ(シロザケ)、カラフトマス、ギンザケ、ベニザケ、マスノスケ、サクラマスなどがあり、富山県の河川にはサケとサクラマスが回帰してくる。サケ(シロザケ)はサケの仲間の中で日本人に古くからもっとも親しまれており、そのため呼び名もさまざまで、北海道ではアキアジ、トキシラズ、北洋でシロ、宮古でオオナマコ、気仙沼でオオメマス、塩釜でラシャマス、石巻でイヌマスなどと呼ばれている。
分布
 日本、朝鮮(東海岸)、沿海州、千島、カムチャツカ、アラスカ、北米西海岸などに分布しており、日本における回帰溯上河川は、太平洋側では利根川以北、日本海側では福岡県那珂川以北である。
回遊経路
 日本で生まれたサケは、春になると川から海へ降り、夏には北上し、餌を求めてアラスカの沖にまで達する。そして北洋で3〜4年たって成魚となり、生殖腺が成熟してくると、生まれ故郷の日本の川へ向かって回遊する。ベーリング海を渡り、千島列島にそって南下し、日本の沿岸にたどり着く。
生態
  サケは産卵期になると、親魚の体側に赤紫色の雲状斑の婚姻色があらわれ、体色が樹木のブナの木肌の色に似ていることからブナサケと呼ばれる。また、この時期の雄は、両顎の前端が突き出して鈎(かぎ)状に曲がっていわゆる「鼻曲がり」となり他の雄を追い払い、自分の子孫を残すための産卵場を確保する。
 産卵期は、日本では9月から翌年の1月までで、川床から地下水の湧き出る砂礫(されき)底に雌が穴を掘って産卵する。産卵数は平均3,000粒ほどである。産卵後には親魚は全てへい死する。
 ふ化した稚魚は、2〜5月ごろ、体重1グラム、全長5センチ前後になると川を降って海洋生活に入る。
 海洋では動物性プランクトン、小魚、小イカなどを食し、北洋で3〜4年くらした後、全長約70センチほどに育って産卵のために1万キロ以上の旅をしながら、再び自分の生まれた河川に帰ってくる(母川回帰性)。
 この習性を利用して、人工ふ化放流事業が行われており、産業上の南限は日本海側では富山県となっている。
母川回帰の謎
 サケ属の魚は、主に北太平洋の寒流域に棲み、川で生まれ、海で育ち、再び生まれた川に帰って産卵する性質(母川回帰性)が強いという共通の特徴をもっている。
 また、卵で移植された先の川で育ったサケについても、移植された川に帰ってくることから、母川回帰性は両親からの遺伝ではなく、後天性のものであることがわかる。
 サケが生まれた場所をどのように記憶し、どのようにして探しだすのかは、まだはっきりとは解明されていないが、母川をどのようにして見分けるのかについては、「嗅覚」によるものであろうといういくつかの実験結果があり、実際に川へ戻ろうとするサケの鼻孔を塞ぐと、回帰しなかった例もある。
 サケは、稚魚期に育った川の匂いを覚えて海に出て、北洋で3〜4年くらした後、産卵のために自分の育った河口に到達し、海に出る前に覚えた特殊な匂いに刺激されて自分の産卵すべき川に入るのだといわれており、その確率は98パーセント以上とのことである。
 サケの母川回帰には、「嗅覚」を刺激するそれぞれの川の特有な化学物質が関与していることが、一般的に認められるようになった。
 しかし、母川から北洋へ、北洋から母川へ回帰するまでの行動は、どのような感覚情報によるものかはまだ不明のままである。
 仮説としては、太陽コンパス、地磁気、体内時計又は海流の走行性利用など色々な説がある。
 いずれにしても、体重がわずか1グラムぐらいの小さな体で、1万キロ以上の旅をしながら、数年後に自分の育った川に間違えずに帰ってくることは驚異の一つである。
伝統的な食文化
 サケは、正月用の新巻きや塩引きなど古くから親しまれており、卵は、すじこ、イクラとして珍重されている。
 富山県は、ブリの食文化圏であり、残念ながら北海道や新潟県ほどサケの料理方法は発達していない。
 北海道では、三平汁、ルイベ、薫製など多くの郷土料理があり、頭部の軟骨を使った氷頭(ひず)なますや腎臓の塩辛(めふん)は酒肴に最適である。
 サケ漁の古い伝統をもつ新潟県では、村上市三面川に日本で最初の「種川制度」が設けられた。「種川制度」は、サケの天然産卵を保護するために人工的に作られた産卵用河川で、三面川では1750年代(宝暦年間)に村上藩の事業で行われた。
 この地の人々のサケに寄せる愛着は強く、頭の先からしっぽまでが料理の対象となっており、昔から人々の間で伝えられてきた固有の伝統サケ料理は100種類以上とも言われている。
 サケの各部位における主な料理としては、頭部(氷頭なます)、えら(カゲたたき)、身(刺身、塩焼き、川煮、飯ずし、酒びたし)、皮(おつまみ)、心臓(どんびこ煮)、内臓(なわた汁)、卵(味噌漬け)、白子(白子煮)、中骨(昆布巻き)などがある。
増殖事業
 サケは、沿岸の漁業資源としてだけでなく、伝統的な食文化の材料として、また、内水面漁業及び地域振興のための資源としても重要な魚種となっている。
 サケは、国の増大事業により人工ふ化放流事業が行われており、近年、その放流効果が現れてきており、来遊尾数は年々増加してきている。
来遊尾数
 富山県の海面と内水面におけるサケの来遊尾数は、昭和40年代にはわずか1万尾前後であったものが、昭和50年代は3万尾前後、昭和60年代は6万尾前後、平成3年には12万尾に達し、平成7年には18万尾を上回り過去最高を記録した。
 しかし、海面における魚価は漁獲量の増加とは反対に、年々低下してきており、昭和50年代のキログラムあたり1,000円台から最近では200円前後まで低下してきている。
河川内のサケ採捕
 河川内でサケを採捕することは、資源保護の観点から、水産資源保護法(昭和26年法律第313号)により禁止されている。ただし、サケの増殖を行う場合に限り、都道府県知事の「特別採捕許可」を受け、種卵の採取等を目的とした採捕が認められている。
水産資源保養法
 (内水面におけるサケの採捕禁止)
第25条 漁業法第8条第3項に規定する内水面においては、さく河魚類のうちさけを採捕してはならない。但し、漁業の免許を受けた者又は漁業法第65条第1項及びこの法律の第4条の規定に基づく省令若しくは規則の規定により農林水産大臣若しくは都道府県知事の許可を受けた者が、当該免許又は許可に基づいて採捕する場合は、この限りでない。
富山県の主なサケ捕獲方法
ヤナ
 格子状の柵(竹や塩ビパイプなど)で川を横切って遮断し、その一部に捕獲槽を作り、捕獲槽に入ったサケをタモ網などですくいあげる。
 親魚に損傷をあたえないことや疲労を与えないことなどからヤナによる捕獲方法が最も良い方法である。
投網
 円錐状の袋状の網で、裾に沈子(ちんし・網やつり針を水中に沈めるためのおもり)を付け、頂部に長い手縄を付けた漁具を用い、サケがいると思われる場所へ網をおおいかぶせるように投げ入れ、手縄によって静かに引き寄せ、広がった網を順次狭め最後にこれを引き上げて捕獲する。
小屋掛けオトリ投網
 主に神通川で行われており、川岸に仮設小屋を建て、岸から2メートルほどの川の中にヒモでつないだオトリを泳がせる。オトリは主に雄を使用するが、オトリのしっぽから10センチほど後ろに水底から少し離して釣り糸を張りつめる。糸の片方を置き石に、片方は小屋の中に引き込んで鈴につなぐ。オトリに引き寄せられたサケが糸に触れると小屋の中の鈴が鳴り、投網をかぶせて捕獲する。
押し網
 主に県東部で行われており、弧状の竹を2本交差し、竹の末端部分に袋状の網を付けた漁具を用い、夜間、灯火を体の後ろにぶら下げると前方に灯火による人影ができる。サケが周囲の明るさを嫌い人影に逃げ込むところを上から漁具を押しかぶせ捕獲する。
流し網
 長さ15メートルほどの長方形の網地の下部に沈子を付け、その両端には竹竿を付け、網の上部に手縄(補助綱)を付けた漁具を用いる。舟2隻にそれぞれ2人ずつ乗り込み、うち1人は櫂を用いて舟を操り、もう1人は網を操る。舟と舟との間に網を張り流して降れば、網は袋状となり、サケが袋に突き当たった時に素早く竹竿と手縄で網口を塞ぎ、それと同時に舟を引き寄せ捕獲する。
人工ふ化放流事業
 本県のサケ人工ふ化放流事業の歴史は、神通川において明治16年地元の先覚者生田清堅によって県下最初のふ化が試みられた。現在、7ふ化場17河川で実施されており、増殖施設の整備に伴い稚魚放流尾数の増大や増殖技術の改良により回帰量の増大が図られてきている。
 また、稚魚放流尾数は、昭和40年代には500万尾前後であったものが、昭和50年代は3,000万尾前後まで増大し、昭和60年代には最高の約4,000万尾に達したが、その後は減少傾向を示し、現在ではふ化場の適正収容能力の約3,000万尾となっている。これは健康で大型の稚魚を生産し、回帰率を向上させるためのものであり、より効率の良い人工ふ化放流事業の実施に取り組んでいる。
 内水面では、特に庄川における回帰親魚尾数の増大に目を見張るものがあり、平成7年には55,000尾が回帰し、本州日本海側で第1位となった。
 この要因の一つとして庄川では河川敷内にある豊富な湧水を利用し、サケの生態に合わせた自然により近い飼育方法を行い、健康で大型の稚魚を大量に生産したことが第一と考えられる。
サケ・マスふ化場の飼育管理
 サケの稚魚は、人間の赤ちゃんと同じように丁寧な扱い方が必要であり、最初のころには1日に8回も給餌を行わなければならないし、池の底掃除も毎日行わなければならない。
 飼育管理を少しでも怠ると稚魚に病気が発生し、全滅してしまうこともあるので、飼育担当者は大変な気を使わなければならない。もちろん、正月も返上して飼育管理を行っており、このような苦労をして放流した稚魚が3〜4年後に大量に帰って来た時の喜びは何事にも換えられないものである。
 しかし、人工ふ化放流事業を実施している内水面漁協では、その放流事業経費は主に国と県による稚魚の買い上げ補助金等でまかなわれているが、その補助金額では充分とはいえず、資金面等運営上解決すべき課題が多い。また、ふ化場の採卵、飼育に携わる人は、雇用期間が周年でないことや賃金が低いこと等から人の確保が難しく、後継者もほとんどいないのが現状である。
今後の対策
資源管理
 稚魚放流尾数は、現有施設の適正収容尾数である約3,000万尾程度とし、健康で大型稚魚の放流により、回帰率の向上に努める。また、銀毛資源など品質が良く、価格の高い資源造成を図り、経済効率の高いふ化放流事業を推進する。
ブナザケの有効利用
 採卵後のブナザケは、従来、薫製や味噌漬け等一部食品として利用されていたが、味の低下と独特の臭いのため商品価値が低く、大半は農業用肥料などに回されていた。
 そこで、富山県食品研究所ではこのブナザケの有効利用として、すり身や魚醤油などの新製品の研究、開発を行い、平成9年からは県内食品業者が本格的に商品化、特産品づくりに乗り出す予定である。
内水面でのサケ活用
 サケ祭り、サケのつかみ取り大会などのイベントの開催やサケの産卵ウォッチングなどの実施により、一般の人々に川とサケに親しみ、関心を持ってもらうことが必要である。
河川環境
 サケにとっては、産卵場である河川が原点であるが、現在の河川のように魚が生息しにくい環境では、サケ資源の維持、増大のためには人工ふ化放流事業に頼らざるを得ない。
 しかし、将来は、人の手を加えなくても自然繁殖により資源がいつまでも維持できるような河川に環境を整えて行くことが必要である。
参考文献
・中村守純 1975「原色淡水魚検索図鑑」 (北陸舘)
・イヨボヤ会館 1988「さけのごっつお」 (越後村上の鮭料理)
・若林信一 1996「富水試だより」66号
・重杉俊雄 1955「神通川誌」
・富山県水産試験場 1979〜1983 「さけ、ます資源増大調査報告書」
(つの ゆうじ・富山県農林水産部水産漁港課振興課主任)
−平成9年2月8日放送−
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