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テレビ放送講座 平成8年度テキスト「第5回 渓流を釣る、岩魚・山女漁」


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TOP 第5回 渓流を釣る、岩魚・山女漁 杉谷 静

川と生きる 〜富山の川魚漁〜幽谷の主(ぬし)イワナ
 貧食、悪食で知られたイワナは岩魚と書くとおり渓間の岩、大石の間を棲家とし、水生昆虫を主な餌とするが、陸上の昆虫ばかりか、カエル、ネズミ、時には水鳥のヒナなどの小動物まで捕食することがある。
 河川の源流部や上流部、その枝沢の落差の多い流れを好み、水温が17〜18度となる中流部ではほとんどその姿を見ることはない。
 富山県内に生きるイワナはほとんどニッコウイワナ系と考えられるが、水系によりその色、斑紋、鰭(ひれ)の大小等微妙に変化が見られ面白い。
 概して水量の少ない小沢、水温の高い谷では体色、特に腹部に赤味が濃くなり、深い瀞(とろ)、水温の低い渓谷では全身が銀色の美しい体色、体側の白斑も純白に近いものが多い。秋の繁殖期にはそれらに関係なく婚姻色が現れて雄は逞しい赤銅色を帯びる。
 アメマスはイワナの降海型で流程が短い寒冷地の河川では普通に見られるが、富山県では黒部川など一部の河川でごく少数溯上することがある。
 イワナを釣る、という漁は網漁やカイボリ漁(川の流れを変え、水のなくなった場所の魚を採る)など一網打尽的漁法で大切な資源の枯渇を招いたり、供給過多で価格を下げるということを防ぐにはとても合理的な漁であった。
 昭和30年代までは川漁師や山仕事の人達が片手間に季節的に行う半専業のイワナ釣りは、山に近い料理旅館、川魚料理店などで需要があり成り立った。
 しかし40年代に入ると養殖技術の進歩と普及で市場に出回る養殖イワナの数が飛躍的に多くなり、またどこへでも生きたまま運べる手軽さと消費先に蓄養が可能なことから、希少価値が身上であったイワナも価格が安くなり、専業としてのイワナ釣り漁はほとんど見られなくなった。
 現在では天然ものの価値が見直されてはいるがまだ専業が成り立つ程には需要はなく、遊漁という分野で釣り人が多くなり、釣りという漁は技術として多岐に亘り発達・発展し続けている。
 釣り人の増加とともに各河川では内水面漁協が組織され、養殖したイワナの稚魚、成魚が放流されるようになった。
 しかし放流はその河川に悠久の日時を経て定着した固有種の雑種化を進めることにもなりかねないため、養殖に際してはその河川の親魚からの採卵受精が望まれる。
 現時点では、もうほとんどの河川の上流域に養殖魚が放流されているから、その河川の純粋種は最源流部でのみ生き残っていると考えられ、こうした源流部には釣り人の立入りを許さないイワナの聖域を設け、自然繁殖を見守ることも必要ではないか、と思っている。
イワナを釣る
源流釣りと本流釣リ
 イワナを狙う釣り人は源流派と本流派に二分される。
 源流派はときに流水域が1メートルにも足らぬ小支流で釣ることもあり、ひとつのポイントをひと流しで探って次のポイントに移る、というように動きの早い釣りになる。
 足に自信があり、釣場の源流まで2時間や3時間歩くことも苦にしない健脚の持主が多い。イワナは釣り人が少なく、スレていないからよく釣れるが、反面釣場はブッシュが多く、竿も4、5メートル以下、道糸もそれより短くしたチョウチン釣りとなりやや面白さに欠けるところもある。
 一方、6メートル以上の長竿(ちょうかん)を振って本流の大場所に大型イワナを釣る面白さは格別で、イワナの強い引きを充分に堪能できる。常願寺川などでときには8メートルの長竿を使うこともあり、ひとつの大瀞を1時間以上もかけてゆっくり探る楽しみもある。
もちろんその両方を楽しむ釣り人も多く、私などその節操の無い釣り人の代表格である
エサで釣る
 早春3月(神通川水系など一部の河川では4月)渓流釣りは解禁になる。
 山野はまだ雪に覆われていて、渓流の釣場に近づくにはときにはカンジキの必要なこともある。
 奥深い渓谷でのイワナ釣りはこの時期不可能。比較的浅い谷、井田川水系の久婦須(くぶす)川、野積(のづみ)川、大長谷(おおながたに)川などに釣り人が集中する。また足場の良い早月川、常願寺川、庄川水系の利賀川なども釣り人の多い谷である。
釣り人は先ずエサとなる川虫を採る。浅瀬の小石の下からキンパクと呼ぶヒラタカゲロウの類、クロカワムシと呼ぶトビケラの類、オニチョロと呼ぶカワゲラの仲間を専用の川虫タモを使って採る。これらはイワナ釣りに格好のエサとなり、エサ箱の水ゴケを敷いた上につぶさぬように入れ蓋をする。
 川虫で釣る釣り人も必ず予備のエサを用意して行くが、それは増水で川虫の採捕が困難だったり、川虫をイワナが喰わない場合に使うためである。
 予備エサはブドウ虫(ブドウスカシバの幼虫)、ミミズ(現在では釣具店で買える養殖のもの)あるいはイクラだったりするが、フルシーズンをミミズ、イクラでそれぞれ通す人も中にはいる。
 初期のイワナは水温の低さからあまり動かず、深い淵や瀞場で静かにエサを待つ。
 清冽な流れに仕掛けを入れる。やや重いオモリで川底近くをゆっくり流してイワナのアタリを待つ、と道糸の目じるしが流れに逆うようにツイッと止まる。
ひと呼吸待って竿先で合わせるとイワナの重みが竿を通して手元にぐんとくる。あまり冬の間エサを食べていないイワナはやや細く、サビも取れず体色も黒ずんで、それが身をくねらせながら水面に浮き、岸に寄せられ、やがて釣り人の手でビクに入れられる。
 4月に入ると各河川は一斉に雪解けが治まり、イワナは活発にエサを捕食して魚体も見違えるほどに美しく、また引きも強くなる。この季節はエサにあまり気を使わなくてもよく、イワナはどんなエサでも良く釣れるときである。
 やがて雪解けが治まると一転して釣れなくなり、7月中旬頃から富山県内の山間部には「オロ」「オロロ」(イヨシロオビアブ)と呼ばれる吸血アブが大量に発生し、8月下旬まで釣り人の立入りを拒み、実質的に休漁期となる。
 9月に入ると陸上のバッタ、コオロギ、トンボなどの昆虫を水面に浮かせて釣るブットバシ釣りが効果があり、見ながら釣るという毛バリ釣りにも似て面白い釣りが楽しめる。
毛バリ、ルアーで釣る
 雪解け水が治まって、エサ釣りが難しくなる頃、イワナは水面を翔ぶ羽虫を追い、毛バリ釣りが盛期をむかえる。
 毛バリ釣りには源流や小沢で行われるチョウチン釣り、やや川幅の広い渓流や本流で行われるテンカラ釣り、人造湖や広い本流などで行われる洋式のフライフィッシングがある。毛バリは原則として自分で巻いたものを使う。
 和式フライのテンカラ釣りでは、ミノ毛(蓑毛)に茶色のスズメ、キジなどの羽根、胴には浮力をつける意味で山菜のゼンマイの頭部を覆う綿毛を巻いて仕上げ、その上にクジャクの細い枝羽根を1〜2本巻きにした、どちらかといえば不細工ともいえる仕上がりのハリ、洋式フライでは水生昆虫、羽化(うか)後の羽虫などをリアルに表現したものでパターンも何百種類と多く、魚を釣る行為よりも毛バリを作ること、使ってみることを楽しむ釣りである。
 しかし釣果からいえばチョウチン釣り、テンカラ釣りの方が上で、これは釣果を重視したものと考えられ、昔の専業漁師達も釣ったイワナが弱らないため、この釣りを好んで行った。
 ルアー釣りは小魚をイミテーションしたミノー、スプーン、スピナーなどバルサ材、金属、プラスチック製のルアーに、フック(3本イカリ状のハリ)を付け、60インチ(1メートル80センチぐらい)前後のトラウト用のロッド、それに道糸が1〜2号150メートル巻けるリール、これは竿のガイドのパターンに合わせてスピニング、クローズドフェース、ベイトキャスティングリールなどをセットして行う。
 遠投してリーリングしながらアクションを加えて釣るが、人造湖などではアメマス化した大型イワナの釣れることもあり、またスポーツ的な要素もあってファンが多い。
清流の妖精ヤマメ
 美しい魚である。これほど美しい体型と色合いを持つ魚は他にはない。
 アユも美しいが、ヤマメには清流の青さ、木々の緑、渓間に溢れる日差しの暖かさを合わせ溶かしたような温もりと気品がある。
 一生を渓谷で終える陸封型と、成長期を海で過す降海型がいる。
 陸封型は1年余りで成魚となり、産卵繁殖を行うが、サクラマスのように産卵後死ぬことはなく、2〜3回産卵するものもいる。体長は1年で12〜3センチ、3年程で30センチぐらいになる。
 降海型は海に入る準備のために河川の中流、下流域に降り体色が全体に銀白色となり、これを銀毛という。
 なかにはそのまま海に降らず河川で過し、春になると再び体側にパーマーク(パールマークともいう)が現れてヤマメの姿に戻るものもいる。
 しかし12〜2月の短期間だけ海に入り豊富なエサを食べ、河川の水温が上昇を始める3月には川へ戻る短期降海型も富山県の黒部川沿岸にはいるのではないか、と私は考えている。
 それは1〜2月の冬期、入善海岸や、生地などでクロダイのウキ釣りに、オキアミのエサで25センチから30センチぐらいの銀毛ヤマメがよく釣れ、それが3月に入ると平曽(ひらそ)川、入(いり)川など黒部から出る用水路の河口に近い真水部分で釣れるようになることからで、かねてから研究者の方々の御意見を聞いてみたいものと思っている。
 現在、富山県内にはヤマメのほか、養殖放流されたものか、または誰かが移入したものかアマゴが定着しつつあり、八尾の別荘(べっそう)川などではそのほとんどがアマゴに変わっている。
 そのほか岐阜県と流程を同じくする河川では、上流で放流されたアマゴが下降してきてヤマメとの雑種化が進んでおり、その純粋種が年々少なくなりつつある。
ヤマメを釣る
 エサ、毛バリ、ルアー釣りともにイワナ釣りと大差ないが、技術的には格段にむずかしくなる。仕掛け作りもイワナより繊細さが求められ、現在では道糸に0.2号、ときには0.15号などの細糸を使うこともある。
 エサは川虫、ブドウ虫、ミミズ、生イクラなど、近年は入手の手軽さから生イクラで釣る人が増え、釣果も安定して良く、また使い易い。
 ヤマメは渓流の上流部から中流部を好み、低山の小支流にも多い。
 黒部川では本流よりも用水部分に多く棲み、3月の解禁直後には入善一帯のコンクリートで護岸された小用水でも数釣りが楽しめる。
 しかしパーマークがほとんど消えた銀毛に近いヤマメが多く、居付きのヤマメ独特の体型をしたものはあまりいない。
 県東部の境川、笹川、小川などの小河川にも多く、早月川、常願寺川では中流部で型のよいものが釣れ、神通川の支流熊野川、その支流黒川などの毛針のテンカラ釣りが面白い。
 八尾町の久婦須川、野積川、大長谷川などは毛バリ、エサとも楽しめ、県西部では庄川支流利賀(とが)川、山田川、井田川の上流百瀬川、湯谷(ゆだに)川や桂川もヤマメの多い川である。
 そのほか富山県の渓流にはニジマスの放流されている所も多く、人造湖では黒四ダムにはヒメマスもいて時々舟で釣っている姿を見る。
 富山県は10月になると渓流は禁漁となり、やがて魚達は繁殖の時をむかえる。無事に産卵を終えた頃、山々はしだいに雪のべールに覆われてゆき、渓谷は半年にわたる深い眠りに入るのである。
(すぎたに しずか・飲食店経営)
−平成9年2月15日放送−
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